RPGの戦闘における雑魚戦とボス戦と初動の遅さ

はじめに

RPGの戦闘にはボス戦と雑魚戦という二種類の戦闘が用意されているゲームが多くあります。 この記事では、この2つの性格の違いとプレイヤーキャラクターのスキルの向き不向きとそれによって生じる問題、その対応策などを雑多に書いてみます。

ボス戦と雑魚戦

ボス戦と雑魚戦の違いは何でしょう。

まずは戦闘機械そのものの回数の違いというのが挙げられます。 雑魚戦は回数をとにかくこなすことになります。 ボス戦はそれに比べて回数が少ない事が多いでしょう。

他に強さの違いが挙げられます。 ボス戦は強さが雑魚に比べた高めに設定されていることが多いです。 特にHPが雑魚戦に比べて大幅にあげられていることが多いでしょう。 敵の火力自体はこちらのHPという受けられる量が決まっているため、ボスを強くしようとしてもインフレは抑えられている印象です。

HPの量が根本的に違うことからボス戦と雑魚戦ではプレイヤーが取るべき戦略が異なる場合があります。

戦略の違いとそれぞれの向いているスキル

特に雑魚敵のHPが低く抑えられている場合には、雑魚戦では数をいち早く減らすこと、こちらに被害が出る前に速攻で倒しきってしまうことを狙うのが基本戦略となるでしょう。 全体攻撃、あるいは単発でとりあえず火力が出るスキルが相性が良いでしょう。 一方で、味方の攻撃力を上げるスキル、敵の防御力を下げるスキルなど、火力を出すまでに一手間に挟むスキルは雑魚戦にはあまり向いていないかもしれません。 もちろんゲームの設計によるところが大きいので、雑魚戦でもバフデバフを積まないと難しいバランスのゲームも存在しますが……。

一方ボス戦では速攻で倒すことは諦めて、腰を据えて戦いを挑むことになるでしょう。 こうなってくるとバフデバフスキルも生きてきます。 火力を出すのに多少時間がかかっても、そちらのほうがトータルで効率が良いとなれば、そちらを選択する戦略を取ることになるでしょう。

また、以前こちらの記事で書いたような条件付きスキルのたぐいもボス戦向きというか雑魚戦に不向きというかそんな感じがします。

習得すべきスキルのズレの問題点

ボス戦と雑魚戦でスキルにそれぞれ向き不向きがあることを述べました。

ここで、スキルの割り振りがプレイヤーに委ねられているゲームを考えてみます。 すると死にスキルを取得する必要性が生まれるという問題があります。 ゲーム全体でボス戦と雑魚戦の両方に対処しなければならないプレイヤーはどのようにスキルを取ったら良いのでしょうか。 基本的には雑魚戦に向いているスキルとボス戦に向いているスキルを両方とっていくことになるでしょう。 両方を取るのはよいとして、ゲームのバランスによってはボス戦時には雑魚専用スキルは死にスキルで、雑魚戦時にはボス専用スキルが死にスキルとなってしまう可能性があります。 スキルが死にスキルとなる問題は最悪、特定のスキルが死んでいるだけなのであまり問題にはならないかもしれませんが、やはりプレイヤーとしては死にスキルを取ることになるのは避けたいことのような気がします。 普段全く役に立たなくてもボス戦で役に立ちさえすれば死にスキルではない、という考え方もあるでしょうが。

他にも問題点を上げると、クラス間の性能差を生み出すことになるかもしれません。 ゲームなどではクラスによって道中向きとボス戦向きのクラスと言うように、クラスの取れるスキル構成からいって雑魚戦とボス戦のどちらかには良くてもどちらかには対処しにくいというクラスが生まれたりします。 これをゲーム制作者としてよしとするかどうかはそれぞれでしょう。 これをクラス感の差別化だとして良いものとして受け入れることもできますが、いっぽうで例えばボス戦の回数が少ないゲームなどではボス戦に強いスキルは割りを食っていると感じるかもしれません。

さらに使うスキルが違い戦い方が普段と変わるということそれ自体が問題かもしれません。 雑魚戦とボス戦で使うスキルが違うとなると、極端なことを言うと雑魚戦はアクションゲームなのにボス戦で突如シューティングになるようなギャップというものをプレイヤーに感じさせている可能性があります。 これの何が問題かというと難易度調整でプレイヤーを成長させるということと噛み合わないということです。 ゲームはプレイヤーの成長も考慮して少しずつ難易度を上げていく作りにすることが多いでしょう。 理想としてはザコ敵と戦っている間に少しずつ良い戦い方をユーザが学習して、それをボス戦でも実践し、強大な敵を倒すという体験をプレイヤーに与えられるのが最高ですね。 バフデバフスキルがボス戦でのみ必要で他の戦闘では必要ないとすると、ゲーム初心者のプレイヤーなどはバフデバフスキルをボス戦で使うということができるでしょうか。 他のゲームでバフデバフの重要性を理解しているゲーマーのプレイヤーならばバフデバフスキルがボス戦で優位に働くことを見抜けますが、できるならば初心者のプレイヤーにもそのバフデバフスキルを使う楽しさというのを経験してほしいものです。 雑魚戦の時点でバフデバフスキルが効果のあるものだという認識を与えていき、プレイヤーを成長させてボス戦に望ませたいはずです。 ボス戦と雑魚戦で取るべき戦略があまりにも違いすぎては、ゲームデザインとして考えたときに噛み合っていないということになります。

初動の遅さと対応策

対策としてはボス戦と雑魚戦の戦略の溝を埋めることになるので、ボス戦用スキルを雑魚戦に寄せるか、雑魚戦用スキルをボス戦に寄せるか、またはその両方が考えられるでしょう。

ボス戦用スキルを雑魚戦に適用しようとしたときの問題点は初動の遅さです。 最終的に火力が伸びるとしても、準備にターンがかかるような場合は雑魚戦では使いにくくなります。 凝ったクラスを作ろうとして先に上げた記事で述べた条件付きスキルなどをたくさん取り入れると、初動が遅くなりがちです。 色々考えられて作られたであろう複雑なことをやるクラスより、単純な火力役のほうが雑に強いというような、ちょっと残念なゲームに出くわしたことはないでしょうか。

初動の遅さの対応策として、とりあえずなんでもいいから火力を前借りしてぶっ放せるようにするというのが一つです。 世界樹4のインペリアルは強力なスキルが1ターン目からぶっ放せて良いクラスでした。 インペリアルは強力な火力スキルをオーバーヒートという形で埋め合わせています。 オーバーヒートのようなクールタイムでコントロールするというのは初動を遅くせず条件付き火力を作れて良い感じですね。

条件付き火力について、条件を戦闘開始時に整えてしまうというのもあります。 また世界樹から良い例があるので見てみます。 世界樹5のリーパーというクラスは初動の遅さがあったため、世界樹Xに登場する際には瘴気の兵装が戦闘開始事自動発動になりました。 瘴気の兵装は4ターン持続し、この状態のときの条件付きスキルが発動します。 5のときから「先制兵装」スキルで確率で発動していて、レベル最大で100%発動していましたが、これが自動発動に変えられました。

両方に使えるスキル

ボス戦向き雑魚戦向きと分離してきましたが、両者に使えるスキルというものを用意することもできます。

簡単な方法は両者のスキルを組み合わせてしまうというもの。 例えば敵全体にダメージを与えつつデバフをかけるというような単純なデバフにしないというのは、雑魚戦でもデバフを使わせる一つの方法かもしれません。

雑魚戦とボス戦の質を変える

スキルを雑魚戦とボス戦との向き不向きで考える他に、そもそもボス戦と雑魚戦の境界を薄くするということも考えられます。

ゲームをどのように設計するかということを考えたとき、雑魚戦をどこまで雑魚にするかというのが考えどころでしょう。 雑魚戦であってもバフデバフをきちんと使わなければならないバランスにするということでボス戦とのギャップを小さくするということが考えられます。 雑魚戦を重たくしすぎるとそれはそれでプレイのテンポが悪くなるかもしれないので他の要素とバランスを見る必要はありますが。

もう一つの手段として雑魚敵の方も初動を遅くするという対応策も考えられます。 戦闘前のエンカウントの仕方で先手を取って戦闘に入ること前提で、最初のターンはこちらだけが行動できるとか。

次に作ろうとしているゲームの展望

次に作ろうとしているRPGは上記のことをいろいろ考えた上で、雑魚戦の敵の初動を遅くしつつ雑魚戦でもバフデバフ等が活躍する程度にボス戦に近づけようと考えています。 雑魚戦が重たくなるので、その分間に挟むテキストなどを利用してゲーム体験のテンポが重たくなりすぎないようにしようとは思っていますが、多少重めのゲームになりそうです。

おわりに

例によって雑多に思いついたことを書き連ねる記事でした。 次に作る予定のゲームの妄想がどんどん溜まっていきますね……。