ノンマップとマップの再構築

以前記事にした 「ロードライト・フェイス」というゲームはノンマップを謳うゲームである。 今回はその「ノンマップ」のRPGについて考えてみる。

はじめに断っておくが、私はRPGやフリーゲームの経験が浅い。 ノンマップを謳うゲームも「ロードライト・フェイス」がはじめだった。

そんな私がはじめて「ロードライト・フェイス」をプレイして思ったのが、 「本当にノンマップなのか?」ということである。 簡単にいうとダンジョンRPGの一方通行バージョンと見ることもできるのではないかと思ったのだ。


ノンマップと通常のマップの境界は曖昧であるように思う。

2Dのマップチップを並べたマップが存在しないという意味ならば ダンジョンRPGもノンマップになってしまう。 方眼紙にマッピングしたりなど、マップを強く意識するゲームだというのに!

ダンジョンRPGはマップがあるとみなすとする。 それでは選択肢で行き先を選んでいくアドベンチャーゲームはどうだろうか。 各シーンの間には明確な距離や位置関係といったものは示されていない。 シーンの行き来ができるがこれをマップと呼ぶのだろうか。

もしこのようなゲームをマップがないと呼ぶとして、 同じようなアドベンチャーゲームでもシーンの地図上での位置が示されたらどうだろうか。 シーンとシーンの間の位置関係が示されたことになる。

究極をいえば、ダンジョンRPGは1マスにつき4つのシーンで構成されている アドベンチャーゲームとしてみることもできる。

こうやって見るとノンマップなのかそうではないのか曖昧に思える。 ノンマップかどうかという判定は、結局のところ何をマップと定義するかによって変わってくる。

大事なのはノンマップかノンマップではないかの分類よりも実際にゲームが楽しいかどうかなので、 このような分類の仕方を議論すること自体に意味がないかもしれない。


私が「ロードライト・フェイス」を最初にプレイしてマップがあるように感じられた理由として ひとつ考えられるのは、通常のRPGのマップに置かれている要素がいくつもでてくることだ。 「ロードライト・フェイス」ではノンマップを謳っているが、 よくあるRPGにおいてマップに配置される要素がゲームの中に上手に取り入れられている。

まずは風景描写があげられる。 よくあるマップのあるRPGでは、マップチップを並べたマップで シーンの情景や雰囲気を伝えるというものがある。 これは重要なマップの役割のひとつだろう。 「ロードライト・フェイス」では階層ごとに背景が変わる。 2Dマップチップは存在しないが、ゲーム背景によってこの役割を担っている。

次に会話イベント。 これも2Dマップチップを並べたRPGではマップ上に配置されているが、 「ロードライト・フェイス」にも会話イベントというのが存在する。

アイテムの購入や入手などもマップに置かれている要素を取り込んだものといえるだろう。 マップのあるRPGではマップ上に商店が設置されていたりマップ上に宝箱が配置されたりしている。 「ロードライト・フェイス」ではダンジョンを前進していると時々アイテムが落ちているし、 商店と出会うこともある。

敵とのエンカウント処理もそうだ。 マップのあるRPGでは敵とのエンカウントもマップ上で行われる。 エンカウント率やエンカウントするモンスターの種類などがマップごとに用意されている。 「ロードライト・フェイス」でもダンジョンを進んでいると敵にエンカウントするし、 敵の種類はエリアによって異なっていた。

一方でマップのあるRPGにあるような探索の自由は廃されている。 唯一探索といえそうなものはアイテムをひろうかどうかの選択肢だ。

ロードライト・フェイスでは通常のマップのうち 戦闘と雰囲気作りに関係するものがピックアップされているといえる。 風景描写や会話イベント、エンカウントするモンスターの分布などは ゲームの雰囲気作りなどに当てはまるだろう。 アイテムの購入や敵とのエンカウントは戦闘に関係するものだ。 一方で探索に関係するものは捨てられている。 自由にマップを行き来して探索することはできないし、 マップを使った謎解きなども存在しない。

ロードライト・フェイスのシステムは、通常のRPGにおけるマップという 単一の分割不能のように見える要素を上述の要素に分解して、 必要なものを取捨選択したものといえる。

一見すると既存のゲームで単一の要素に思えるものを より細かい要素に分解して、そこからピックアップしてゲームを再構築するというのは、 新しい遊びを作るのに有用な手法かもしれない。

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